地域とスポーツ・スポーツチームとの関わり
今回は川崎フロンターレのサッカー事業部・プロモーション部部長兼広報グループ長の
天野春果氏の著書「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」
の書評を綴りたいと思います。
まず、なぜこの書籍に着目したかですが、
・フロンターレのホームタウンである川崎市が、川口市と同様に東京に近くて、
かつ転入率や転出率が高い、子どもが比較的多い
という特徴があり
・そのような環境で一見地域のつながりが希薄化しているイメージがありながら、
地域密着をどのように実現させているのか?
(しかも以前川崎市を本拠地にしていた現千葉ロッテや東京ヴェルディは他地域に移転している)
という点に興味を持ち、プロのクラブであろうとなかろうと、
地域スポーツクラブの経営に重要なポイントが詰まっているのではないかと思ったからです。
書籍の中身としては、これまでやってきたこと=実績を通じての
ポイントが多く書かれていて非常に読みやすかったです。
例えば、ややマニアックかもしれませんが、
川崎フロンターレがやりとりをしている行政の部署は、
(教育委員会の傘下にあることが多い)スポーツ系の課ではなく、
シティセールス・広報室という部署のようです。
これは最初からそうしていたわけではなく、行政側の反応から見えてきた
というようなことが書かれており、リアル感が満載でした。
この書籍を通して特に印象に残っていることは2点です。
一つは上記の例にも関連してきますが、
行政や企業など他のステークホルダーと"競合関係"になるのではなく、
いかにお互いを活用し合い、winwinの"協働関係"を構築できるかということです。
例えばフロンターレの場合は、
ポスターを市が管轄する駅前のエリアに掲出するという件について、
シティセールス・広報室とやりとりをすることで、
フロンターレの宣伝=川崎市のPRという協働関係を確立させています。
ちなみに書籍の中には、
「プロサッカークラブは、サッカーだけを取り扱う専門業者ではなく、
サッカーを活用した総合商社である」
という文章も出てきており印象的でした。
二点目も共通する部分と言えるかもしれませんが、
スポーツ(サッカー)好き以外の人とどのように接点をつくるか?ということです。
フロンターレの場合は、算数ドリルの製作がこの例にあたります。
これまでプロスポーツチームと教育との接点と言えば、
「~スポーツ教室」という名の選手による直接指導がメインだったと思いますが、
算数ドリルにフロンターレの選手が登場して、
選手の背番号やシュートスピードなどの数字を活用して
算数の勉強がフロンターレを知る機会にもなるというのは
今までになかった新しい切り口と言えるでしょう。
この書籍を通して、自身の活動でも、他のスポーツ団体と活動が重なって競合することなく、
(特に普段スポーツに親しむ機会のない人と)接点をつくり
新たな市場をつくっていくかという点を大事にしていきたいと改めて思いました!